霜月 朔(創作)

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カーテン



蒼い月が浮かぶ夜。
灯りのない部屋の中。
私は君を抱き締める。

レースのカーテン越しに差し込む、
淡い月明かりだけが、
私達を仄かに照らす。

こんな醜い世の中で生きるには、
君の魂は余りに純粋過ぎた。
私は世間の偏見や差別の刃から、
君を護ってきた。

だが。
残酷な現実に斬り付けられ、
私の心が血を流す度、
君は酷く悲しい顔をするから。

此処ではない場所へ行こう。
私の言葉に、
君は嬉しそうに微笑み、
『私も連れて行って下さい。』
と、答えてくれたから。
蒼い月明かりの下で、
お互いに永遠を誓う。

君がドレス代わりに身に纏うのは、
ベッドから引き剥がされた、
…白いシーツ。
君がベール代わりに被るのは、
窓から引き千切られた、
…レースのカーテン。
互いの薬指に嵌める指輪すらない、
誰の祝福もない、二人だけの儀式。

ただ、
カーテンを奪われた窓から、
無遠慮に覗き込む蒼い月だけが、
私達の門出を見守っていた。

カーテンの向こう側には、
誰よりも大切な君の微笑み。
君の鼓動を私が奪い、
私の呼吸を君が奪う。

蒼い月は赤く染まる。

『永遠に君を護ろう。』
『永遠に貴方の側に。』

7/1/2025, 7:22:52 AM