お題《空白》欠けた少年、蝶の少女、罪、旅路の果て、神様
空白の空の花が大地を彩る
世界が死ぬたび 世界が嘆きに彩られるたび
神様は代わりを遣わした 「欠けた少年」
人はうわさをする
「ああ穢れの子」 「罪人」 「人じゃないアレは」
神様が決めたことに 神様がつくった命は
――逆らえない
少年は世界を巡り旅路をゆく
人に汚く罵られようと
人に石を投げられようと
人が少年を憎もうと
これは、神様が決めたこと
少年は祈り祈る
少年は人の穢れを器に引き受け
少年は心に善も悪もない
「欠けた少年」
神様の捨てたもの
神様から切り離されたもの
遠く遠く旅路をゆく蝶
旅路の果てへゆく蝶
感情も欠けた少年は
はじめて、心の水面に、波紋を描く
「わたしのこと――まだ、おぼえてる?」
蝶から少女へ
少女から蝶へ
美しいはねを持った、美しい蝶
少年の瞳は虚ろ
空っぽな月
「…………君は。ぼくを知ってるの?」
感情のない言葉
少女は答えない
少女は 少年は
応えない
空白の空の花が大地を彩る
どちらともなく手をかざす
欠けた少年はふとつぶやく
「……………………君だったんだね」
風花にのって遠くはこばれる
9/14/2025, 12:12:59 AM