緋鞠

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「あなたの大切なものはなんですか。」

X月XX日 くもり
今日は国語の授業で課題が出た。テーマは、「自分にとって大切なもの」。パッと思いつかなかったので、友達にそれとなく聞いた。ある人は親から貰ったネックレス、またある人は小さな頃におじいちゃんが作ってくれたパズル、など。それらを参考にしつつ、考えてはみたが今のところは思いつかない。まぁ期日までは一週間あるため、ゆっくり考えようと思う。

X月XX日 くもり
今日も今日とて変わらない1日だった。昨日からずっと自分にとって大切なものが何かを考えているが、思い浮かばない。考えすぎたからなのか頭が痛い。今日はこれくらいにしておこう。

X月XX日 くもりのち雨
天気が崩れ出して少し憂鬱だ。そういえば、夕方のニュースで世界的に新型ウイルスが流行しているらしい。海外ではロックダウンも起きているようだ。これから、どうなるんだろうか。

X月XX日 雨
今朝、急に学校から連絡があった。新型ウイルスが世界的に流行していることから、休校という措置をとることになったらしい。したがって、作文の課題の期日も少し延びた。ありがたいが、それでも早く書き上げてしまわなければ。休校期間中の他の課題にも取り組まないと。

X月XX日 晴れ
学校がないとゆっくり起きられて、ありがたい。一日家の中にいられるというのも、かなり嬉しい話だ。かと言って、それが大切なもの、という訳でもないのだが。

X月XX日 晴れ
気がつけば、休校になって二週間がたった。課題をのんびりと進めつつ、作文についても考えた。まだ分からない。自分の中で、物足りなさを感じるようになった。いや、物足りなさ、というか、どこか違和感を感じる。何故だろう。

X月XX日 くもり
休校期間になって二週間半。違和感の正体が少し見えた気がした。友人と誰かの家で遊ぼうか、という話になった時、新型ウイルスが流行しているということで、話が流れた。その時にふと思い出したが、友人たちとは部活が違うため春休みに入ってから会えていない。要はふた月半近く会えていない。それに気がついた時、急に寂しくなった。

X月XX日 雨のちくもり
昨日の日記をつけた後から、作文に取り掛かり始めた。上手く言葉にはできないけれど、昨日のことは書くべきだと思ったのだ。ただ、変な文になっていそうなので、後でもう一度読み返さなければ。

X月XX日 晴れ
今日は久しぶりの登校日だった。作文の発表の日だ。先生が作文を読みクラスの中で優秀だと判断された生徒が先生から指名を受けて発表する。私は発表する側だった。他の人が私の作文を聞いてどう思ったかは知らない。それに興味もない。けれど、今回の出来事は私の中で大きな意味を持っていると思う。

「私の大切なもの」
初め、私は自分にとって大切なもの、と言われて何も思い浮かばなかった。命はもちろん大切だけれど、いつかはみんな平等に失う。お金も大切と言えば大切だけれど、こういう作文で挙げるものとしては少し違う気がするし、何より私自身、そこまでの大金は欲しいと思わない。だから、私にとって大切なもの、が何も思い浮かばなかった。
でも、今回新型ウイルスが世界的に流行し世界中でロックダウンが起きて、学校も休校になった。それにより、外に出られない、以前なら、毎日会えていた友達に会えない。遊びに行こうと言って予定を合わせさえすれば遊びに行けていた。それすらも、叶わなくなった。
そんな新しい毎日になって、私はようやく気がついた。今まで当たり前だと思っていた日常が本当は当たり前ではなく、特別なものだったのだと。そして、私にとって大切なものだったと。私にとってこれは忘れていた事実でした。
だから私にとって大切なものは、日常を過ごせること、です。

テーマ:大切なもの

作者のつぶやき:
今回は日記風にしてみました。難しい……。日記部分をもっと長くかけるようになりたいですね。まぁでも、そこそこ書きたいことは書けたので、自分としては満足です。

4/2/2024, 2:44:30 PM