「ごめんね」
タッタッタッタ…。
どれだけ走ったのだろうか。
足が鉛の様に重い。
気持ちも重い。
理由は簡単。
好きだった“神谷”に告白したから。
だけど、振られてしまった。
『紫苑の事は友達として好きだけど…
恋愛では…“ごめんね”』
なんて言われてしまった。
分かっていた。
分かっていたけれど、伝えたかった。
気がつけば、海にたどり着いた。
嗚呼…そっか此処は始めて、神谷と出会った場所だ。
俺は暫く海辺を歩いた。
「はぁ…振られちゃったな…。分かってたけど…辛いなぁ…。だったら恋なんてしなきゃよかった…。」
そう溢しながら、靴と靴下を脱ぐ。
靴を綺麗に揃えて、ズボンの裾を上げる。
ひんやりと冷たい波が、押し寄せては引いていく。
「冷たいな…。」
今日の気温は高いはずなのに、冷たかった。
「“ごめんね”…神谷…。
こんな事したくないけど、俺はお前に幸せになってほしい。だから俺はここで諦めるよ。
俺がいると互いに、辛いだろ?だから…」
俺は神谷への気持ちを溢す。
最後まで上手く言えなかった。
涙を堪えようとした。
でも涙は意思とは反対に、勝手に溢れてしまう。
同性愛が認められていたら、どんなによかったのだろうか。
俺はそう思いながら、冷たい海の方へ歩みを進めた。
《ごめんね…。神谷。俺の分まで幸せになれよ。》
俺の気持ちは波によって消されてしまった。
5/29/2024, 11:57:16 AM