【さよならは言わないで】
ついに向かえた、市民合同演奏会当日。
足りない人数でパートを分担して、
限られた時間の中で必死に練習して、
なんとか曲を仕上げられた。
そして本番の演奏も、無事に終えることができた。
「お疲れさん。」
『お疲れ様です。ありがとうござました。』
「いや、こちらこそ。いい経験をさせて貰った。」
どうしても人手が足りなくて、ダメ元で高校時代の先輩に、
エキストラ出演のお願いをしてみたら、快く了承してくれた。
お仕事の都合上、合奏練習にはなかなか参加できなかったけど、
それでも、ゲネプロ前には完璧だった。
『お忙しい中、本当にありがとうござました。
先輩にお願いできてよかったです。』
「あぁ俺も、久しぶりにお前たちと演奏できて楽しかったよ。」
昔から先輩は優しかった。
同級生からは、"後輩に甘い"なんて言われていたらしいけど…。
『また、お願いしても、いいですか?』
「ああ、もちろんだ。…まぁ仕事の都合が付けば、だけどな。」
今回の1回で終わらせたくない。
また、先輩と一緒に音楽がしたい。
だから、…。
「じゃあ、またな。」
『はい。また、よろしくお願いします。お疲れ様でした。』
"さよなら"でなんか終わらせない。
12/4/2024, 3:40:28 AM