きりたにのあ

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僕は中学生とき1回だけ家出したことがあるんだ。

特に理由があった訳では無い。
何となく家から出たくなった。ただそれだけ。

たった数日だけのちっさな逃避。

そして、3日くらいたった日に腹が減ってたまらなかった。

その時どこからともなくいい匂いが漂って来たんだ。
抗えない甘い匂い。

そんな匂いにつられて行った先にあったのは小さい小さい建物。

道の奥にあって、誰が来るんだ?

ってくらい見つけづらそうな場所にある建物。

匂いは間違いなくここから来ている。
そっと木の扉を開いたの。

中には丸っとしたおばさんと、紳士って感じのおじさんがいた。

びっくりした2人の顔を見て、僕は涙が溢れた。
お母さんに会いたい。家に帰りたい。って

そんな僕を見て二人は何か言う訳でなく、
ただそばにいて、ホットケーキを焼いてくれた。

「特別だよ?」

って4段に重なったキレイなホットケーキを焼いてくれた。

ふんわり香るバターの匂いと
黄金に輝くメープルシロップの甘さ

わがままで飛び出した僕に
与えてくれたこの温かさを
きっと僕は


ーー忘れられない、いつまでも

5/10/2024, 10:08:34 AM