爆撃のあとにキーンという音が流れる映画があった。主人公が鼓膜に衝撃を受けて一時的に失聴した状態を表現したのだろうが、建物が破壊される音よりリアルで記憶に残っている。
それとはまた状況は異なるものの、私は静寂の中にいるとなぜかキーンと耳鳴りがする。
ひょっとしたらいつも耳鳴りがしていて、外からの音が消えると気づくのかもしれない。
換気扇の音、家の近くを走る車の音、隣りから響く足音……起きている間、そこらじゅうに溢れている音を意識することはあまりない。
夜、布団に入って寝つこうとすると、冷蔵庫の動作音や時計の秒針の音が急に大きく感じられたりする。
音はいつも身近に存在している。
家では生活音が、外にいれば、たとえ周りに人がいなくても空気のさざめきを感じる。
そんななか、まれに訪れる無音の時間。
すべての音が途切れ、静けさと同時にやってくるキーンという耳鳴りは、内から聴こえてくるため振り払っても消えない。
静寂はしんとしている状態をさすが、少なくとも私にとって無音の状態は耳と心をざわつかせるものだ。
『静寂に包まれた部屋』
9/30/2024, 3:24:19 AM