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放課後、テニス部の部室に向かおうと歩いていると、ベンチに座っている先輩を見かけた。
俺は動かしていた足を止め、少し考える。
今日一緒に帰りてぇな……けど、なんて声かけよう。
…ここは無難に……。
俺は意識していないかのように歩き始め、彼女の前で立ち止まった。
「先輩!こんにちは!」
俺が呼びかけると、彼女はゆっくり顔を上げた。
「こんにちは」
彼女はにっこりと微笑んで、それまで読んでいた本をぱたりと閉じた。
俺はちょっと息を吸って、気持ちを落ち着かせる。
「……今日、めっちゃいい天気ッスよね!」
「そうね。最近暖かくなったしね」
「ハイ……」
……しまった!会話が終わってしまった。
終わった、っていうか……自分で終わらせてしまった。
もっと何か話を……。
って、俺がしたいのはそこじゃないだろ!
今は世間話なんてどうだっていいんだ。俺が話したいことは……。
すうっと、一回深呼吸をした。
「せ、先輩っ!」
言葉にしてから、ちょっと声大きすぎたか……?なんて思った。
「なに?」
先輩は優しい声色でそう言ってから、俺の目をじいっと見つめる。
どきどき、どきどき、どんどん心拍数が上がっていく。
……えぇい!当たって砕けろ!
「今日、一緒に……か、帰りませんか!?」
【2023/05/31 天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、】

5/31/2023, 12:43:52 PM