27(ツナ)

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安らかな瞳

気難しくて誰にでも厳しくて、いつも不満げだった。
父のそんな所が嫌いで、私は早く実家を出た。
そんな父の元に気が弱くて病弱な母を残して、
私が家を出て間もなく母は持病が悪化して呆気なく亡くなってしまった。
母は、私が殺したも同然。

それから間もなく父も体を壊して入院していると聞いた。けれど、私は父との面会へ行くことはなかった。
言ったことろで、どうせ罵倒されるのは目に見えていたから。
面倒は事情をわかっている親戚が見てくれた。
入院してしばらく経ったある日、親戚から「そろそろ本当に危ないから、1度だけでいいから顔を見せて」と催促があって、渋々行くことにした。

久しぶりに見た父は私の知っている頃とはまるで変わってしまった。
チューブに繋がれて痛々しくこけた頬、骨と皮だけのような腕、声もしわがれて聞くに絶えない。
あまりの姿に目を背けたくなって、病室を出ようとした。
「…来て、くれたのか…。」
目も見えているのか分からないし、私を認識しているのかも分からない、けど声をかけられて私は立ち止まった。
「…私の事なんかわかんないでしょ?」
「俺の…大事な娘だ。来てくれて、ありがとう…。」
まるで、それを言うためだけに生きていたみたいに、言い終えた瞬間心電図から『ピ───』と無機質な音が響いた。
私はずっと、父に背を向けていたが振り返って見た父は今まで見たこともないほど安らかな瞳をしていた。

3/14/2026, 10:47:50 AM