300字小説
人を呪えば
陰陽師なんて仕事していると、たまに『誰々を呪詛してくれ』ていう厄介な依頼があるのさ。
前にあったのは不倫相手の呪詛だったな。遊びのはずが本気になって奥さんや職場にバラしてやるっていうからだと。勿論、ちゃんと断った。俺はそういう仕事はしてないからな。
その男が先月またやってきた。不倫相手が死んでから悪いこと続きなんだと。会社はクビ、離婚され、さらに厄介な病気まで見つかったらしい。きっと彼女の祟りだからなんとかして欲しいって。してやったかって? 無理無理。背中にすぶ濡れで暗い顔の女が憑いてるんだから。人を呪えば穴二つ。あれは逃れられないさ。
で、アンタは俺に何の依頼だい? もういい? そうか、ならいいんだ。
お題「逃れられない」
5/23/2024, 11:55:44 AM