※同性愛が苦手な方はスクロールして頂いて構いません。
もしも君が女の子じゃなかったら、私は君の事を好きだと堂々と言えていたのだろうか。
この辺りでは相当偏差値が高いと言われている高校に入学したのはいいけれど、全くもってついていける気がしなかった。どいつもこいつも頭の良さしか重視しない奴らが集まった学校なのだから。まぐれで合格した私は場違いなんだ。つまらない。授業を受けて挨拶をしてご飯を食べてまた授業。
そんな時だっただろうか。私が君に出会ったのは。髪が短くて丸眼鏡の似合う可愛らしい子だった。運動部らしき君が壮行式で着ていた正装は女の子とは思えないカッコ良さと強さを放っていた。すぐに本能が反応した。あの時感じた衝撃は嘘じゃない。名前も知らない君を好きになってしまったんだ。
それから少し経ち、君のクラスや名前、勉強やスポーツの事についてたくさんの情報が入ってきた。完璧だった君が私は少しだけ羨ましかった。それに比べたら、私は到底君の隣に立てる存在じゃなかった。
それからというもの、君を見かけては負の感情と抑えきれない好意とが混ざりあって口も開けない重苦しい状態が続いた。その度に君は決まって誰かと楽しそうに談笑して愛嬌のある笑顔を見せていた。
ずっと考えていた。もしも君が…もしも君が…って。でもそのもしもが叶うことはない。無謀だ。いっそ私が変われば君は振り向いてくれるんじゃないのかとも思った。それでもきっと関係は変わらないんだ。本来出会うはずのなかった君を私が見つけてしまっただけだから。
題材「もしも君が」
6/15/2025, 12:00:49 AM