aoharu

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俺は誰よりもけん玉が得意だ。
俺よりけん玉が得意なヤツなんていねー。

俺はけん玉がうまいから小学校では超人気者だった。
だから中学に入ったときにけん玉部を作った。
いろんなヤツが面白がって入って来て、俺はそいつらにけん玉を教えてまわった。

その中にアズマってヤツがいた。
そいつ、けん玉めちゃくちゃヘタ。
ぜんぜんできねーの。
しょうがねーから俺がずっとそばで教えてやった。

「アズマくんうまーい!」
「わたしにも教えて!教えて!」
一週間もしたら、アズマはけん玉が得意になった。

「いいよ、順番ね」
アズマはいつも笑ってそう言う。

でも俺のほうが上手いに決まってる。だってアイツはまだ世界一周もできないし。

でも俺のところには誰も来なかった。俺が教えてやろうとしてもみんなアズマのところに行くから。
俺のところにくるのはたったひとりだけだった。

「ね、ケンくん、ここの乗せ方なんだけど…」
「うるせえ」
「え?」
アズマはきょとんとした顔をした。
「アズマにはもう教えねー」
俺はそっぽむいて言った。
「なんでよ」
アズマの声が震えているのがわかった。泣いているのかもしれない。
「教えねーったら教えねーっ」
俺は顔を見ないようにアズマの横を突っ切った。

                  【誰よりも】

2/16/2024, 11:49:50 AM