とうの

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決行

「どうしたらいいの……」
「昨日は一晩寝たら治るって言ってたじゃない」
「決行は今夜なのよ、マリ」
早朝の屋敷の中、少女たちは張りつめた空気を纏っていた。揃ってマリのベッドを囲んでいる。
「ごめんなさい、みんな。熱、下がりそうにないの。でも分かってるわ、決行するなら今夜しかないって。───だから、私を置いていって」
そう言ってマリは弱々しく微笑んだ。
「そんな、マリをここに残すなんて出来ないわ……何とかならないの?」
「レイナ、こればっかりはどうしようもないわ。マリが無理して、……死んじゃったら元も子もないもの」マユコがうつむいて言った。
「でも、こんなのあんまりだわ」ミサキはレイナに同調する。
「みんな落ち着いて。私は大丈夫だから。私の役目はリサコに引き継いでもらう。リサコは電子機器に手馴れてるから。レイナ、リサコに伝えてくれる? あなたの部屋が、リサコのいる南館に1番近いから。朝の鐘が鳴って、渡り廊下が開放されたら、すぐに、お願い」
突然、部屋の扉がガチャリと鳴った。一瞬でその場の空気が凍りつく。
が、扉を開けたのは、彼女たちと同じ、少女だった。
「エミ!もう、びっくりさせないで」
「ほんと、"あの人"が来たのかと思ったわ」
「全くどうやって南館から来たのよ?見つかったら終わりよ──ねえ、リサコは一緒じゃないの?」
リサコはエミのルームメイトである。
少し安堵している少女たちと違って、エミの顔は青ざめていた。
「──どうしたの?」マリが訊く。
「リサコがいないの──」エミの声は震えていた。
「リサコが」エミの顔はどんどん青ざめていく。
「リサコが消されたわ──」
午前6時。鐘が響く。


「どうすればいいの?」

11/21/2023, 3:16:20 PM