歩道橋を歩くのが好きだった。
信号のルールから逃れて、好きなタイミングで階段さえ登ってしまえばいつでも目的地まで向かうことが出来る。歩道橋から見える景色も高さも、全て好きなタイミングで自分のためだけに用意された道に感じられた。
何故ここまで歩道橋にこだわるのか自分でも分からないのだが、そんな特別感が好きだったように思う。
歩道橋を歩くたびに、水族館にあるトンネルの頭上を自由に泳ぎ周るアザラシを想像した。
歩道橋を登り、とくに変わり映えのしない、どこにでもあるような風景をスマホに収める。
段差がないわりに段数の多い階段を登っていく。僕は家に帰って毛布にまるまる自分を想像した。雲はゆっくりと移動する抽象画のようだった。
11/7/2024, 11:50:47 AM