『紅茶の香り』2023.10.27
彼が紅茶を飲んでいると、様になって見えるのは日本人ではないから。
普段はコーヒーを注文する彼が、今日は紅茶を所望してきた。
うちにはアッサムとダージリンしか置いていないので、日本育ちとはいえ生粋の英国人である彼の気を損ねやしないかと勝手にヒヤヒヤしたが、別に茶葉にこだわりはないそうなので少し安心した。
コーヒーを飲む時は彼はミルクとシュガーをたっぷり入れる。しかし、紅茶はミルクだけ要求してきた。
彼は紅茶をティーポットから紅茶を注ぐと、そのあとにミルクを注いだ。
ミルク問題はたびたび議論になるそうで、彼の両親は先入れ派と後入れ派で対立しており、紅茶を飲む度にバチバチしているという。
その息子である彼は後入れ派で、量もたっぷり入れるそうだ。
それはともかく。
彼が窓辺の席で、陽の光と同じ色の髪をキラキラと輝かせながら紅茶を飲んでいる様は絵になる。
口を開くと出てくるのはカタコトでない流暢な関西弁だが、黙っていると外見のままの印象を抱いてしまう。
紅茶の香りに包まれる彼は、ただ美しい。
10/27/2023, 12:29:07 PM