新しい歯ブラシを買った。
それまで使っていた歯ブラシは、軽い力で綺麗に磨けるという謳い文句に惹かれて買ったものだ。
軽い力で隅々まで綺麗になるというので使っていたのだが…。
10日程で毛先が開いた。
シュッとスマートな形をしていた先端は何処へやら、歪な花火みたいに花開いている。
歯ブラシの買い替えのタイミングはメーカーにもよるが、1か月に1回を推奨されている。
普通であれば1か月──30日ないし31日保つわけだ。
それなのに、10日程しか保たない…。
…恐ろしい。
歯ブラシの耐久を約3分の1にしてしまう自分の不器用さが。
パッケージの謳い文句は勿論覚えている。
軽い力で綺麗になる──だ。
使う時に力を込めないようにすれば良い。
それも、わかっている。
わかっているのだが、自身の調整を司る部分的なところがちょっと…いや、かなり下手なのだろう。
力を込める必要がないのに、力を込めてしまう。
理屈がわかっても加減が出来ないのは何故だろうか。
我がことながら不思議である。
力加減とは、理屈でするものではないのかもしれない。
もっとこう、心的な、器用さというかなんというか…。
そんな事を一人グルグル思っていると、
パッケージから取り出した新しい歯ブラシが
「優しくしてね」と言っているように見えた。
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力を込めて
10/7/2024, 1:07:02 PM