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 過ぎ去った日々を変えることはできないが、過ぎ去った日々に意味を与えることはできる。
 高校の時、物理の先生が語った言葉だ。寡黙な先生で授業は単調。ボソボソ話しながら公式を板書していく。決して面白い授業ではなかった。周りのみんなは授業を聞かず、内職をしていた。
 わたしは先生がたまに話す哲学の話が好きで先生の授業が好きだった。物理というよりは哲学が好きだったのだ。
 授業の半分以上がナチス・ドイツとハイデガーの話の時もあった。聞いていたのはわたしだけだったかもしれない。先生は物理の話より哲学の話の方が好きだったようだ。
 先生は私が高3になる時に隣町の高校に異動となった。出世には全く興味がなさそうだったので、一物理教師として定年を迎えたと思われる。
 高校を卒業して30年たつが、今でも先生の話した言葉が頭に残っている。
 無意味に過ごしてしまった20代後半。あの時代を今更後悔しても変えることはできない。が、あの時代があったから今がある。と言えるよう前を向いて頑張りたい。

3/10/2024, 3:08:36 AM