スランプななめくじ

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淑女たるもの、秘密は多ければ多いほど魅力的。
だから今日も、口癖となった言葉を発する。

「これは、貴方と私だけの秘密ですよ。」



周りの紳士は皆、神秘的な私に夢を見る。
知らないことには興味を持ち、興味は後に好意となる。
故に、自分自身を晒してはならない。
彼らの好奇心を満たしてはならない。
秘密にしなければ、秘密をつくらなければならない。
そうでもしないと、ただの私では好いてもらえない。

だというのに、私には大した秘密なんてない。
そこらの乙女と何ら変わらぬ、平凡な生娘だ。
これこそが、私の一番であり唯一である秘密。
私が私でいるために、隠さねばならない事実。
皆に愛されるために、演じなければならない。

謎多き淑女を騙るために、今日も私は嘘を吐く。

「これだけは、誰にも言えない秘密なのです。」

6/5/2024, 5:29:33 PM