アリア

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人は酷いことが起こると視界がモノクロになるらしい。そんな馬鹿なと冗談だろうと思った事だろう、しかしそれはどうやら本当だった。
街中を歩いていると景色が色を無くしたのだ。
人も建物も電車も全て。

私は焦った。
これはいつ治るものなのか
どうして発症したのか
病院はどこに行けば診てもらえるだろう?


でもふとこのまま目が見えなくなってしまったら
嫌なもの酷いこと何も目にしなくて済むのか?と悪い考えが嫌な方へとシフトしていく。
いやいやそれは困るのだ。
だって私の好きなものが見れない、家族とコミュニケーションが取れない、視覚を失うとはきっとそういうことなのだろう。

ふいにピコンと音が鳴る。
それはメッセージアプリの音で開けば恋人からだった。
大丈夫かと。

はて、何かあっただろうか。
そんな心配される事。
大丈夫、そう打とうとした時画面にポツリと雫が落ちる。雨が降ってきたのかと空を見れば晴れているのでおや?と首を傾げると周りから視線。
そして目に違和感。
あぁ、なるほど。この雫は私の目から落ちたものでコレは涙なのか。

続いて音が鳴り画面に視線を落とす。
失ったばかりだから心配で、そんな文面を声にならない言葉で復唱し記憶が蘇る。



そう…そうだった
もう居ないのか…だからこんなにも世界はモノクロで私の心は虚しさでいっぱいなのか。


泣いていいんだよ


その一言に私の世界は色が戻る。
起こってしまったことは戻らない。
モノクロだったのは私の心が忘れたかった事を隠してしまったからだった。


人は臆病で弱くてとても繊細だ。
それでも生きていかなきゃならなくて
立ち上がらなきゃいけない。

モノクロはきっと貴方の心にも発症する可能性があります。ですがそれは貴方を支えてくれる人が治してくれるかもしれません。
その事を心に記録しておいてください。


お題【モノクロ】

9/29/2025, 4:25:56 PM