「手袋が必要ないくらいに」
イルミネーションはクリスマスの後も続く。
久しぶりのデートコースは街路樹が鮮やかに彩られている。
いつも見慣れているはずの通り。
子供の頃から馴染んだ街並み。
それが光と色で別の世界のものに見えてくる。
「どうした。手袋忘れたのか」
カバンの中に入ってる──言うよりも早く、彼は私の片手を掴むとそのまま自分のコートのポケットに突っ込んだ。
悪戯が成功した子供のように笑う彼。
「それじゃ、あったかいの片手だけだよ」
「あとでそっちの手と交代するし、それに──」
耳元で囁かれた恥ずかしすぎる提案に「バカ」と返す。たぶん私も耳まで赤い。
────手ぶくろ
12/28/2024, 6:48:52 AM