日照時間が伸びて、日が沈んでも蒸すように暑い。
薄着で寝ていると、遠くの方から耳障りな音が聞こえる。
音が近づていてきて鼓膜の近くで鳴っている。耳を叩くが、容易く逃がされてしまう。
蚊は雌しか刺さない。それも、繁殖のために。
雄の蚊は花の蜜で満足するらしい。
人間側のメリットなど一個もない。
繁殖のために吸われて痒みに襲われる。
叩き潰せる小さな命を敢えて、潰さない。
また耳元で羽音を鳴らす。
蚊の鳴くような声とは小さい声をイメージするが、中々の大声だろう。弱々しい印象は実際の蚊からは得られない。
繁殖のために別種の生き物の血を吸う、強者だとすら思う。腫れた跡は熱を持って疼く。
その痒さを、繁殖のためと許される搾取構造を、いつから私の癖で捻じ曲げたのだろう。
殺そうとしているのに殺せない、
蚊は雌しか刺さず、それも繁殖のためである、
それはつまり、踏み台にされているようなものなのだ。
蚊から見れば血液供給機に過ぎない。
長年の物であった、誰にも選ばれないという思考が確信を帯びる。そもそも選ばれることを望んでいるのか、選ばれないことに悦を感じているのではないか。
そんなことを思うが、痒みを前にしては思考は無力だ。
犬が足で体を掻くように、滑稽に掻きむしる。
こちら側にメリットがない事をすることで、被害者な自分に浸れる。
ただの蚊の吸血からそんなことを思う、私は異常者以外の何者でもない。
5/19/2026, 1:08:30 AM