NoName

Open App

星屑のブランコ。
漕ぐ度、キラキラと音が鳴る。
女の子、両方の赤い靴をそろえて、茶色い紙を真空に揺らしながら、天の川を越えていく。
ゆらぐ鼓動と、月まで登れそうな加速度と、プラネタリウムみたいな空の公転。
美しくそよぐ、母さんの横顔をした、月の砂漠。
カノープスのサソリの心臓。
ヘラクレスの腰帯。
カストルとポルックスの双子の兄弟。
おおぐま座の尻尾。
南から北まで見渡すと、北斗七星の柄杓が、ちょうど、ブランコの形をしていることに気づいたよ。
ハレルヤと母さんが歌う。
星たちよ、今日はもうお眠りよ。
女の子もはにかんで、一緒に節をつけて歌ったよ。
父さんはギターを鳴らし、弦の音が夜空に澄み渡った。
おやすみ、ハレルヤ。目覚めない時も、また幾月も、神様が降りてくるまで。

2/1/2024, 10:14:11 AM