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遠い日の記憶

目を閉じると浮かんで来るのは、
燃える炎が建物の木材を灰へと
変える風景
それをじっと見つめる二人
村々から慟哭の様な悲鳴があちこちで聞こえる。

二人は、何で立って居るんだろう。
何でその風景を眺めて居るんだろう?
彼らは、誰だろう?
目を開けるとぱっとその風景は視界から
消える。
そうして、気が付いたら瞳から涙の雫が
流れていた。
顔を腕で覆って涙を止める
だけど何かが迫り上がって来る
止められないこの気持ちは、何だろう?

「大丈夫?」ふと上から声が聞こえる
寝転がっていた自分の視界を覗き込む
逆さまな顔がある。

私は、身を起こし涙を拭いて立ち上がる。
「行こう!」そう言って私の手を握る
君の手の温もりが余計に私を切なくさせた。


君は、何も思い出せなくて良いんだよ
前世の遠い記憶もあの日の辛い過去も
罰さえも僕が全て引き受けるから

だから君はどうか現世で笑っていたら
嬉しいなあ


【前世】

「ねぇ私達極悪人になっちゃったね」
君が泣き笑いの表情を僕に向ける。

君は、優しいからどんな理由があっても
この状況に納得しないだろう

「君は、僕に巻き込まれただけ全部
僕がやったんだから!」

「でも私のせいで君は、こんな事を
やったんだよね」

「違う君が居ても居なくても僕はいずれ
この村を壊してた。」

こんな....山の神様なんて居るかどうかも
分からない神様に生贄を捧げる風習を
頑なに守って人を毎年殺してる村なんか
無くなって当然だ

君が居なくなる事に何の疑問も罪悪感も
抱かない村の人間なんか大嫌いだ!

    【現世】

だから、どうか君は思い出さないで
あの日の遠い記憶は、全部僕が
持って行くから....

だから君は、どうか笑って居て
そして誰よりも幸せになっていて
僕はもう一度君の耳元に囁く

「大丈夫だよ!」
僕の言葉に安心したのか君は、控えめな
笑顔を浮かべる。

僕は、もう一度君の手をしっかりと
握った。

7/17/2024, 12:02:50 PM