M.E.

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わたしは、言葉によって自分に呪いをかけたが、のちに言葉は呪いの代わりに、わたしに魔法をかけた。



わたしは、小学校の頃にこころの病気にかかった。

そのときは、自分になにが起きているのかがわからなくて、こんなことを考えたり、行動に移したりしているのは自分だけだと思っていた。

だれかに相談したかったけど、わたしが話すことで、その人までわたしのような苦しい思いをすることが怖かった。

こうしているうちに、言葉を呪いのように感じた。思考するためには、言葉が必要だが、思考の際に言葉はわたしを縛り付けて苦しめた。

家でも学校でも、行動が制限され、周囲から異常と思われる行動を、自分の意思に反してやっていた。睡眠がほとんどとれずに朝を迎えることもあった。

何度も思考停止したくなった。思考がなくなれば、この苦しみから解放される。そう思うようになった。

中学校へ上がり、症状は落ち着いてきた。しかし、思考への恐怖は今日までなくなったときはない。

それでも、暗闇のなかでもがき続けるうちに、わたしは自分のこころを安定させる魔法をみつけることができた。

それは、読書だ。本は、言葉があって、それを紡いで文章となる。いろんな本と出会い、自分の感情を表す言葉を少しずつ学んでいく。そして、頭のなかでぐちゃぐちゃになっていた言葉を、紙とペンを用意して、言葉や文章を書き出していくことで、思考停止せずに、自分と向き合うことができるようなっていった。

本を読み終えた後、本の作者や、本を愛読していた人々に会って、友達のように語り合う想像をするだけで楽しかった。

自分とは全く異なる時代や環境を生きた人は、自分との共通点がないように思っていたけれど、考え方や価値観で共通している部分があると、驚くと同時に、なんだか勇気づけられる気がする。

言葉が、文章が、時代も環境も大きく変化を遂げた現代で、わたしにこの本と、この作者と巡りあわせてくれたんだなと思う。

本は文字が、言葉が、文章が理路整然として、並んでいる。これは、魔法だ。本はそこに置いてあるだけなら、印刷した紙に過ぎないけれど、人が本を開いて読み進めていくことで、新たな発見に瞳を輝かせ、少しずつ小さな魔法がかかっていく。



呪いと魔法は、表裏一体だ。だからこそ、自分の意志を強く持って。自分で自分に呪いをかけないように、自分に小さな魔法をかけ続けられるように。









_____________________________魔法______________。



2/23/2025, 3:05:54 PM