『二人だけの秘密』
号外!
勇者が幼き頃に交わした二人だけの秘密、お相手はなんと孤高の女騎士!!
そんな新聞が撒かれると、城下町は有名人同士の色恋話に大いに賑わいを見せた。
そして宿に集まっていた勇者パーティーも勇者の前で、話題になっている秘密について好き勝手に語っていた。
「いやー皆、色恋ネタ大好きネェ」
「これってそのうち尾ヒレだのなんかついてって、気が付いたら実は婚約してましたーとかになってたりしてー」
「幼き頃より愛しあう二人……神もきっと祝福されますね」
「……で、件の勇者サマはどう思ってンデスカー」
皆がニヤニヤと笑いながら勇者を見つめる。
勇者はぶすっと不貞腐れながら、ひたすら無言を貫いていた。
「……」
パーティーメンバーとはそれなりに長い付き合いだ。
何を言ってもからかわれるのが分かっているため、ひたすら無言で耐えるしかないとも言える。
(二人だけの秘密か……)
むかし、まだ生まれた田舎の村にいた頃の話。
年も近かったし、馬が合ったからよく一緒に遊んでた友だち。
幼いながら立派な将来の夢を持っていた二人。
そんな中で交わした二人の秘密の約束。
「おーい、何か答えろよォ勇者サマ」
「あんなの、ただ将来の夢を語り合っただけだよ」
そう二人で朝から晩まで拾った小枝で、戦いごっこをしながら。
方や勇者を夢見て、
方や女騎士に憧れて、
お互い頑張ろうねと約束しただけの話。
皆が求めるロマンスなど欠片もない。
もちろん、そんな事はこのパーティーメンバーにも分かっている。
「外堀から埋められないと良いねー」
女魔導士がカラカラと笑いながら言う。
その言葉につられて皆も笑う。
勇者はそれにさらに腹を立てた。
「埋められてたまるか! 私はこれでも女で、恋愛対象は男だ!!」
ついに我慢が出来なくなって、勇者は叫んだ。
パーティーメンバーはニヤニヤと笑いながら、「知ってる」と口々に呟いたのだった。
5/3/2024, 1:12:18 PM