雪に反射した太陽光と、氷柱から垂れる水に、シャーベット状になった地面。間違いなく気温は氷点下ではない、いつもより少し暖かい、そんな北海道、札幌。
雪の積もらない九州平野部で生まれ育った私には、まだまだ慣れないことだらけだ。雪の歩き方も水抜きも、雪虫のことも、ここで初めて知った。まさか十一月に雪が積もるなんて、降った雪が溶けずにずっと残っているなんて。ベランダに積もった雪で雪だるまを作ろうとしたけど、二重窓の一枚目を開けた途端に流れ込んできた冷蔵庫のような空気に敗北を期した、そんな一月前のことを思い出す。
とにもかくにも、晴れていた。光輝く地面にまた新発見。雪ってこんなにまぶしいんだ、とつぶやきネックウォーマーと手袋、マスクを装着。意外にも、防寒具としてのマスクは侮れない。水滴はひどいけど。
雪靴で踏みしめる地面は、溶けたかき氷のように形を崩し、踏み固められていく。後からこの道を歩く人たちも大変だろう。現にわたしでさえ、慎重にペンギン歩きで動いてなお、何度も転びそうになっているのだから。いや、わたし個人が雪道に慣れていないだけかもしれない。でも、猿も木から落ちるし、道民も雪で滑るかも。北海道に野生の猿はいないけどね。
住めば都。最初は寂しかった。親も友人もいないこの土地で一人きり、大学に行くためだけに乗り込んだ四月の札幌には、道路の脇に雪がドッサリ積もっていた。でもそんなことよりも、ひとりぼっちの寒さが身に染みて、風景を楽しむ余裕なんてなかった。でもいつの間にか、早く昇る朝日も、だれかが作った小さい雪だるまも、家によって違う雪掻きの程度も、楽しめるようになっていた。
冷たい空気が眼の周りを刺す。わたしの瞳には、やわらかい光を放つ朝日が、今日も笑っている。
1/5/2025, 4:09:04 PM