路地

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男は今まで、悪いことをたくさんしてきた。
妊婦に肩をぶつけてみたり、友人から借りた金をかえさなかったり、公園で遊ぶ子供にうるさいと怒鳴ったりもした。
ある時とうとうカッとなって、吠えてきた近所の犬を蹴り殺した。
数年の懲役をすることになった。

男は後悔した。
経歴に傷がついたな。
犬を殺す前に戻ってやり直したい。

入所した夜、男は夢を見た。
「お前が望むなら、お前が望むようにやり直させてやってもいい」
そう言って目の前に光が降りてきた。
「あんたは神か?」
「そう呼ぶ者もいる」
「じゃあ、やり直させてくれ。こんなとこに来なくていいように。」
「いいだろう、明日の朝には全て変わっている」
男はにやりとして、朝を待つことにした。

次の日の朝。
とある刑務所から1人の男が消えた。
見回りをしていた刑務官が、部屋から男が消えたことに気づいた。しかし、誰が収容されていたのか全くわからない。
記録を見ても、確かに誰か収容されているのにその詳細がわからなかった。

光は空から刑務所の様子を眺めていた。
「まあ、0からやり直すくらいなら、生まれなければ経歴を気にする必要もないわな。いいことしてやった」

2023/02/22『0からの』

2/22/2023, 1:22:04 PM