午後二時半、ダメと言われる日を除いて彼女は毎日彼に会いに行った。
「今日はこんなことがあってね」
そんな取り留めのない話をする。彼は話をよく聞いてくれた。
「そうなんだ、うんうん」
相槌の打ち方、間のとり方、どれを取っても完璧だ。
聞き上手とは正に彼のことを言うのではないだろうか。
遺された彼には耳が残った。
「話をいつもよく聞いてくれる人でした」
彼の周りで人々が話す。
こちらを優しく見つめてくれる時も、瞼を閉じて息をしているだけの時もそう。
病室と聞くと私はこのエピソードを思い出すのです。
8/3/2024, 12:28:35 AM