#31 はなればなれ
私には両親がいない。
不仲だった両親は私に影響が出ないようにと幼い頃に私を祖母に預けた。だから正直母親の顔も覚えていない。
祖母は心配性で門限も厳しく、いつも私の帰りを玄関先で待っていた。
正直しつこいなとは思っていた。
でもようやく今年、高校を卒業した。
へんぴな場所だから小学校から高校まで顔ぶれは変わらなかった。
学友というか家族みたいな存在だった。
高校を卒業後はみんな進学してこの村を出ていく。
私もその中の1人だった。
実家を離れ、住み慣れた村を離れ、家族のような友達とも離れ。
いざ上京して憧れの一人暮らしすることになった。
夢のような大学生活、東京暮らしで毎日が楽しかった。実家にいた頃には出来なかった終電まで遊ぶことだって出来た。
もうあんな田舎はまっぴらだ…と思っていた時
1本の電話が入ってきた。
「もしもし?𓏸𓏸ちゃんの電話かな?いきなりかけてごめんね、隣の家の田代です。これだけは伝えないとと思ってさ」
落ち着いたようでどこか焦っているようなそんな雰囲気が電話越しに感じ取れた。
「昨日、おばあちゃん倒れて…」
一瞬何を言われているのか理解出来なくてそれ以降の言葉は覚えていない。
気づけば私は電車に駆け込んでいた。
しぐれ
11/16/2024, 11:14:46 PM