夏川流美

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 ぽつ、と地面に黒い滲みができた。

 ひとつ、ふたつ、みっつ。そして、数えられないほど多く増えていった。

 私は傘もささず、そこに佇んでいた。


 髪は濡れ、鞄は濡れ、シャツは体に張り付いた。

 それでも私は動かずに、そこにいた。


 私の頬や首筋を雨が伝っていく。

 地面を見つめ、ぐるぐるとした感情を咀嚼する。



 好きな人がいた。
 ほんの5分か、10分前まで。


 告白した。
 結果は惨敗。

 全く知らなかったけれど、どうやら彼女が居たらしい。

 彼女に悪いから、もう近付かないでほしい。と
 突き放されてしまった。


 こんなことになるのなら。
 話せなくなってしまうのなら。

 告白なんかしないで、好きな気持ちに蓋をして。
 ただの友達として、すれ違ったら挨拶を交わすような、せめてそれくらいの関係で居たかった。



「――っくしゅん」



 くしゃみが出た。ぶる、と身震いをした。
 雨が冷たくて、寒い。


 顔がぐしゃぐしゃに濡れてしまった。
 だから、もう少しだけ雨に打たれよう。


 空が代わりに泣いている、今のうちに。



 



#空が泣く

9/16/2023, 2:03:04 PM