ミヤ

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"心のざわめき"

貴女はよく雨に降られる人だった。
その割には結構な頻度で傘を忘れるから、雨の日には度々貴女の傘を持って迎えに行ったなぁ。

でもね。
到着して傘を渡しても、貴女はいつも開かなかった。
ありがとう、と受け取って、片手に握りしめたまま僕の傘に潜り込む。
お邪魔します、とにんまり笑って腕を絡める貴女に、いつも苦笑していた。

歩きにくくない?と問うと。
傘は本来一人分の空間しかないから、腕を絡めて寄り添うのは二人が濡れないためには仕方の無いことだ、と早口で言い募る貴女が可笑しくって。
自分の傘を使えばいいじゃないか、とは言わないで、そっか、と納得したふりをしていた。


雨の降る日は心がざわめく。
開かれる事なく色褪せた貴女の傘に、迎えに行くべき人がもういない事実を突き付けられるから。

3/15/2025, 3:06:40 PM