シオン

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「…………だいぶ遊んだようですね」
 朝、サルサの部屋へと訪れたウィルはため息をつきながらそう呟いた。
「…………す、すみません」
「別に大丈夫です。はしゃぎたくなる気持ちもまぁ、分かりますし」
 そう言いつつも若干サルサに目は合わせなかった。ちょっとビックリしてるというより、予想外だった、という感じの顔をしている。
「…………じゃあ、今日は何をしますか!」
 明るくサルサが言ったのに対してウィルはニコッと微笑んで刃物を彼の首に当てた。
「う、ウィルさん……?」
 そうサルサが言ってもウィルはニコニコと微笑むだけ。しばらくしてから、サルサは小さくため息をついた。
「バレるね〜、ウィル」
 そう言った声はアリアの物で、ウィルが瞬きをした瞬間にサルサの姿から本来の彼女の姿に戻っていた。
「当たり前でしょう。逆に何故バレないと思ってるんですか」
「いや〜、私は案外天才ですからね。サルサに変化すればキミのことくらい簡単にだまくらかせると思ったけど上手くいかないね〜、やっぱり」
「サルサさんのことを見分けられなければ教育係は失格だと思いますよ。だいたい、彼はただひとりですから」
「彼は、ってまるで自分や他の奴らには代わりがいるみたいじゃない」
 アリアの言葉に対してウィルは何も返さなかった。アリアもゆっくりと瞬きをしてから言った。
「……そうだね、否定も肯定もまぁできないよね。しかも、キミだけじゃない。私も、他のみんなも」
「個々を見られるような場所ではありませんからね」
 ウィルは小さくそう呟いた。
「ところでサルサさん本人はどこへ?」
「魔法使いすぎて熟睡中。あと7時間は起きない」
「ですよね」

1/20/2025, 3:57:05 AM