僕には、ごく一部の人間を除いて、誰にも教えていない秘密の場所がある
自宅から5kmほど離れたところに建つ家屋
週末になると、ここで一日自由に過ごすのだ
持ってきたゲームで誰にも邪魔されず遊んだり、動画を見まくったり、周りを気にせず歌を歌ったり
築年数はそんなでもないが、価格は超格安
なのにそこそこ広く、2階建て
おまけに防音の部屋がある
そんな所がなぜ安いか
それは、ここに幽霊が住み着いているからだ
歴代入居者は全員、見えない何かが引き起こす現象に恐怖し、退去していったらしい
僕は霊感があるので、幽霊を視認できる
なので、まあ、なんとかなるだろうと思って購入したのだが、幽霊はいきなり水道から血を流すという悪質な嫌がらせをしてきた
さらに壁に血の手形を複数残すなども
イラッときた僕は、事前に用意した札を自分の足に貼り、怒りの回し蹴りをお見舞いしたのだった
恐れをなした幽霊は浮きながら土下座して謝り、祓わないでここに住み続けさせてほしいと頼み込んできたので、邪魔しなければ別にいい、と許可した
先に住んでたのはあっちだし
そんなこんなで入居後は平和に過ごすことができている
入居して最初の方は一人の時間をただただ楽しんでいた
しかしたまにだが、物足りない気分になる時が出始める
何にも縛られない自分だけの時間は欲しいが、さすがに毎週一回、一日フルで一人というのも、飽きてくるものだ
僕は人と接するのが嫌いなわけではない
むしろ好きな方だ
だから、あまりにも一人の時間が長いと、孤独感のほうが大きくなる
退屈になった僕は、幽霊とコミュニケーションを取ることにした
幽霊は案外ノリのいいやつで、会話はけっこう楽しめたし、こちらの趣味にも興味を示してくれた
ゲームの対戦をしたり、漫画を貸したり、動画を一緒に見たり、一緒に歌ったり
まさか、幽霊の友人ができるとは思わなかったが、楽しいのでそこはどうでもいい
秘密の場所で秘密の友人ができたことで、僕の生活はますます楽しくなったのだ
ところで、僕には誰にも迷惑がかからないし、社会で許されないようなことをしているわけでもない平和な内容だが、誰かに言うのは個人的にためらわれる趣味を持っている
それがなにかは絶対に言わないが
誰にも言ってないが、実はそれを気兼ねなくできる場所を探したかった、というのが購入の最大のきっかけだ
しかし、秘密にしたいこととはいえ、誰とも共有できないというのはつらいものだ
幽霊の友人はそんな僕の趣味を理解して応援してくれたので、かなり救われた
僕にとって一番よかったのは、秘密を共有し、応援してくれる友と知り合えたことだろう
3/8/2025, 11:14:56 AM