古びた手記の一部から抜粋。

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小さな頃からよく見る夢がある。

古い大きな城の回りを箒で飛んで城の1番高い屋根に上に降り立ち、大きな真ん丸の月を眺めたり。
薄暗い森の中へ薬草や花を集めに行き、時々何かに追いかけられ逃げていたり。
赤や黄色だったり、青や緑の制服を着た自分と同じくらいの友だちと教室で勉強する夢。


この夢を見るときはいつもどこか懐かしい、帰りたくなるような気持ちになる。

いつも一緒の男の子や妹や弟のように可愛がってる顔を会わせば遊んだり踊ったりする友だちもいて。

目覚めたときには思い出せないその顔たちはそれでもみんなよく笑っていて、そのなかで私も笑っていたのだけはわかる。夢の中の私はいつも楽しげだ。


ベッドの脇に置かれたスマホとメガネを持ち、名残惜しくふわふわのお布団とさよならをする。
大きく伸びをしてテレビを付けると一面に大きな月が写し出されていた。


そういえば今日は数年に一度の月が大きくみえる日だったような。しかもニュースによると満月だとか。

今日は空がよくみえるあの丘に行ってみようか。
私がこっそり「月見丘」と呼んでいるお気に入りの場所に。
夢で見る場所にそっくりなあの丘へ。

「なんちゃって一人ピクニックでもしようかな~」

チューハイ一缶におつまみひとつ。
良い夜になりそうな予感。




「遠い日の記憶」HPMA  side T

7/18/2024, 10:02:36 AM