大二には最近気になることがある。
それはユリアの自室にあるガラス瓶の中身だ。
その瓶は手の中に収まるかどうかくらいの大きさで、中には何かの破片がいくつか入っている。
破片は淡い黄色と白で、組み合わせると球体に見えないこともない。
ユリアはそれを大事そうに部屋の棚の上に飾り、ホコリひとつ付かないよう綺麗に掃除している。
「ユリアさん、あの小瓶の中身って何?」
過去にそう聞いたことがあるが、ユリアは少し気まずそうにした後、「思い出の品なの」とだけ大二に教えた。
大二は特にそれ以上それに詮索することはなかったが、またその小瓶がふと気になってユリアにもう一度聞いてみた。
「ユリアさんそういえばあの小瓶の中って……」
「そうね、もう終わりにするべきね」
大二がそこまで言ったところで、ユリアは大二の言葉を遮った。
ユリアの声色はいつも通りで、優しいはずなのに、どこか悲しそうだった。
大二はなにかまずいことを言ってしまったと直感的に感じ、ユリアに対してできる限りの謝罪を述べた。
ユリアは気にしていないから、と大二をなだめた。
数日後、大二が借りていた本を返しにユリアの自室を訪れたところ、棚の上から小瓶が消えていた。
大二は自分がなにか恐ろしいことをしてしまった気がして、それ以上ユリアに追求は出来なかった。
7/15/2024, 2:35:28 PM