心と心
動悸がしている。
この先、生きていくんだって。
みんな大人になったんだって。
未だに懐かしくなんかなくて、ずっと続いていて
昨日のように思い出す空気を
すっかり子供を卒業したみんなは「懐かしいね」と言う。
現在進行形で、その「懐かしい」を生きている私は
何年も前の湿度と光景をなぞっている。
いい加減、手放したらいいのにと
過ぎ去る時間に適応しようと必死な私がため息をつく
こんな状態で、外界に行くなんて。と
今よりよほど慎重な昔の私は
ひたすらに全てを閉じる。
垂れ目のくせして、悟ったような
少なくとも睨みに近いような目で
指定の服に身を包んだ、見覚えのある私に問われる。
答えて。
「ちゃんと」できてるの?
早熟にも思えた自我がいかに幼かったか
振袖の群れの中で思い知ってるんでしょ?
恥の渦はずっとあるんでしょ?
男女二元論からも逃げてきたんだろ?
潰しの効かない生き方で、どうにもならなくなって
ついには破滅したんだろ?
...動悸がしている。
使い古した眼鏡にぼたぼたと水滴が垂れて
声を殺していたあの時の部屋で
画面の中に縋って、くだらない言葉の無駄遣いと
ファストな繋がりにしがみついていた夜を
薄汚れた写真を見るような心地で、じわじわと思い出す。
2人の私と、2人分の本心が
諦め切れない過去の中で足を引っ張り合って
今を見る目の焦点が合わない。
もしあの日々が事故なら、きっと運び込まれている
もしあの事象が不可抗力であったなら、こんな後悔はない
2人の私が同時に口を開く。
止められない時間の中で
今を見ようと、過去を掻き分けている
水の中に落ちて溺れかけている動物のような
実体も嘘もない心中に問われているのだ
答えて。
どう生きるつもりなの?
12/13/2024, 10:02:13 AM