朝倉 ねり

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『20歳』

はぁっ、ハアッ、ハッ。
自分の呼吸音がいやに耳についた。
「なんでだよ、なんでなんだよ……!」

夢に出てくるのはいつも18の俺。
春から大学に入ると無邪気に信じ込んでいた、滑稽な俺の夢だ。


昔から勉強は人より出来た方だった。
というか、素直なんだと思う。自分で言うとキモイけど。
言われたことを言われたようにやれば出来て、「なんでだろう」と思ったら図鑑なんかで調べて。
『歩くウィキペディア』なんてあだ名を頂戴したのは小学生の時。
中学も躓くことなく勉強が捗り、なんとなく「勉強って楽しいんだな」と思っていた。

そんな俺の天狗の鼻を、見事にへし折ったのが高校だった。
高校受験で受かったのは、この辺りで1番の偏差値のところ。
俺でも名前を聞いた事のある有名な社長とかOBがよく講演会に来たりする感じの、まあ意識高い系って感じ。
周りの人達は有名私立を蹴ってコッチに来たりとか、トリリンガルだとか、今まで地元の田舎の中学でブイブイ言わせていただけの俺では太刀打ちできない存在がゴロゴロといた。
「なぁ、お前志望校どこ?……お、やっぱ東大?俺も!そういや留学がさぁ……」
みたいな会話が1年生から聞こえてくるような場所で、俺は入学3日目で既に場違いさを感じていた。
そんな嫌な予感は的中して、俺は一気に落第に転がり落ちた。
先生方は「この学校の1番下でも、普通の高校だとトップだから」とか言って慰めてくれたが、そんなことを言われたって俺が1番下なのは変わらない。
クラスメイトも部活動に邁進したり、数学オリンピックで賞をとったり、休み時間に「漢文で詩を書いてみた!」とか言うやつもいて、何か特技がある訳でもない俺は疎外感がハンパじゃなかった。
部活も入ってみたけど、顧問のパワハラが酷くてすぐに辞めた。
そんな俺の居場所なんてなくて、中学の時に漠然と考えたていた高校デビューは夢のまた夢となった。

それから2年。
順調に試験で学年下位3分の1あたりをウロウロしていた俺は、これからの進路もよく分からないままだった。
周囲はみんな国公立に向けて勉強していて(田舎なので国公立信者が多いのだ)、就職どころか私立に行くのもご法度って感じ。
そんな熱に押されて、俺もなんとなく勉強してなんとなく模試を受けて、なんとなく皆が受けそうな大学を選んだ。
で、落ちた。
本命だけじゃなく、滑り止めの私立も全落ち。
ンだよ、私立は全部Fランってのはウワサだけなのかよ。

とまぁ責任転嫁をしつつ先生に「浪人しまぁす」と言って、親に頭下げて予備校代出してもらって、……また落ちた。

終わった。
俺はもう19、いや今年で20だ。
20歳!俺の漠然とした予定では大学2年になって、彼女の1人や2人いるはずだったのに!
就職もしていない暫定2浪の俺は、ただの穀潰し、親の子としても生きているのが申し訳ない。

死にたい。
なんかもう全て捨てて死にたい。
最近はそんな思いばかりやってくる。
眠れば悪夢ばかりだし、家での居場所もなくて、今までバイトの1つもしてこなかった俺は働き方が分からない。
俺はどうすれば良いのだろう。

そう思いながら、今日も図書館で参考書を広げるのだ。

1/10/2026, 12:19:01 PM