『ブランコ』
昔はよく乗っていましたわね。
ええ、従姉妹と取り合いになるほど
夢中になりました。
紙の箱をお城に見立てたり、
針金や海岸で拾った貝殻でティアラを作ったり、
便利なおもちゃを与えなくても、子どもは
勝手に自分で遊びを作り出すのが得意なんですの。
今では子どもの頃に出来なかった遊びも物も簡単に手に入れられるようになりましたが、あの頃のような新鮮な気持ちになることは少なくなりましたわね。
「では童心に帰ってみるのはいかがでしょうか?」
振り向けば魔術師がブランコの前に立ち、
ニコニコと笑顔で手招きしていました。
私は不審に思いながらも魔力に取り憑かれたように、
足を運び、知らぬ間にブランコに座っていました。
魔術師が鎖を握る私の手を上から優しく包むこみ、
背中を押せばブランコがゆっくりと動き出します。
ゆらゆらと揺らされていると、
なんだかこころもからだもかるくなってきましたわ。
きがつけばわたくしのからだは
ちいさくなっていました。
さきほどまでいたまじゅつしのすがたは
どこにもみあたりません。
わたくしはこれからどうすればよいのでしょう?
こどものすがたのまま、もとにもどらなかったら…。
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子どものように泣き喚く悪役令嬢の元にセバスチャン
が駆け付け、屋敷へと連れ戻されました。
その後一日経つと、悪役令嬢は元の姿に
戻っておりましたとさ。
2/1/2024, 11:34:20 AM