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 十五夜の夜にあなたと見た満月を、ずっと忘れられずにいる。
 外だと蚊に刺されてしまうと言って、外に出たがらなかったあなた。仕方なしに、ベランダ沿いの部屋から窓の外を見上げていたね。
 お互いなにも話さずにそうしていたから、翌朝には首を痛めてしまっていたっけ。
 物思いに耽って、あっ、と不意に声をあげる。
 そういえば、あの時食べた草饅頭美味しかったな。今夜も準備しておけばよかった。
 ──あの饅頭も、驚いたあなたの瞳も、この月みたいに真ん丸だった。
 こんなに厳かな雰囲気は持ち合わせちゃいなかったけどね。
 それから、あなたの隣で眺めた月は、これの何十倍も、何百倍も色鮮やかに輝いていたような気もする。
 うーん、私の記憶力もずいぶんと衰えたものだ。
「……………ああ、」
 逢いたいなぁ。あなたに。


▶静寂に包まれた部屋 #20

9/30/2023, 2:12:22 AM