春一番という言葉があるように、風の強い日が最近風が強い日が多いなぁ。
俺が働いている場所は都市部にあってビル風もまあまあ吹くから、春が理由だけとは言い難い……かな?
そんなことを考えながら、彼女と待ち合わせ。
行きたい場所をふまえて俺の職場に近いところを集合場所にしていたんだけれど……遅いな。
「遅くなってすみません、お待たせしましたー!!」
風の吹く方向から彼女の声が響く。その風は向きを変え、走って来る彼女の横へ向けて激しい風が横切った。
「わっ!!」
風と共に登場した彼女だけれど、その風は方向を変えたかと思うと彼女のスカートを持ち上げる。
彼女は普段から短いスカートを履くもんだから、俺の視界にも……まあ、それが入りました。
その時の俺の行動は早かった。上に羽織っていたシャツを脱いでそれはもう素早く彼女の腰に巻いた。
「え、はやっ!?」
「はや、じゃないでしょ。短いスカート、可愛いけれど家以外は嫌だって言ったのに」
「うぅ、ごめんなさい」
彼女はしょぼんと顔を下げてしまう。いや、こんな顔を見たいわけじゃないんだけれど……やっぱり他人に見られたくないじゃない。
「可愛いって自覚して」
俺は彼女の耳元に囁いた。
一瞬、言葉に詰まって頬を紅くして俺を見上げる。
八の字の眉、下から見上げてくる困ったような表情は……ごめん、やっぱり可愛い。
「スカート履くなら、他にもなんか履いて。俺の方がもたないから」
俺の言葉を聞くと、ふわっと微笑んで頷いてくれた。
本当に、自分が可愛いこと無警戒なの自覚して!
おわり
三五〇、風と
5/1/2025, 1:11:25 PM