小絲さなこ

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「趣味でやるのが一番」



自分が着ている服とまったく同じ服を着ている人を見かけたとき、なんとなく居心地が悪くなった。
既製品なのだから、自分以外の人もそれを買っていることくらい、わかっていたはずなのに。


「他の人と違う格好がしたいってこと?」

小学校時代からの友人が首を傾げる。

「いや、なんか、制服じゃないのに、同じもの着てるって、なんか気持ち悪くて」
「私は、同じ服着てる人見かけたら、親近感湧くけどなぁ。センス同じなんだーって思う。流行ってるものなら、同じの着てても別に気にしないけどなぁ」
「流行りを否定するつもりはないんだよ。ただ、人とまったく同じものを着たくないというか……流行りのものだけど、よく見るとちょっと違うよね、っていう箇所がほしい、みたいな」
「うーん……そっか……たぶん根本的な感覚からして違うのかも」
「そうかも」

彼女は、私のことも他人のことも、否定しない。

「だから、洋裁習い始めたんだね」
良いと思う、と彼女。

「というか、アクセサリーは昔から作ってたし、なんでそっちの道に行かなかったのかな、と思ってた」
「あー、それはね〜。自分で自分のものを作りたいから。もちろん、親しい人から頼まれたら作るけど、たくさんの人のために作る、ってことはしたくなくて……」

私は自分のために作りたいだけ。
親しい人に作るものも、私がその人に贈りたいだけ。

仕事にしてしまうと、私が本当に作りたいものが作れなくなる気がする。

だから、たぶん、趣味でやるのが一番合っているのだろう。


────世界に一つだけ

9/9/2024, 2:29:47 PM