NoName

Open App

逆さまになった世界。
私は、その緑色に発光する、電球のような不安に手を伸ばす。
中は、水が入っていて、宝石がひとつ沈んでいた。
戸棚から、紙を取り出すと、それに書き付けた。
その不思議を。

ひとつ。
世界は、コバルトでできていて、その水溶液に満たされている。

ふたつ。
上下は決められていて、つるりと円錐状の尖ったほうが上だ。

みっつ。
上下を逆さまにすると、中の宝石が反応する。
攪拌による、魔法式の反応のせいだろうか?

実はこれは、祖母の遺灰で出来ている。
そう、大魔女だった、かつての祖母の、唯一の形見である。
世界とは、マクロコスモスとミクロコスモスを内包する、魔法具のことを指す。
この世界が出来たのは、祖母が死んだ、三日前のこと。
この研究室には、様々な魔法使いが作り出した、『世界』が、多く吊り下げられている。

8/22/2023, 11:16:25 AM