第三話
(全四話ほどを予定している小説ですが、
少し増えるかもしれません。
読んでくれている方、ありがとうございます。)
街とは逆方向に車は進んでいく。空は少し曇りかけていた。明らかにいつもとは様子が違う裕斗の表情は、何かに焦っているような、どこか落ち着き払ったような感じだった。『どこに行くの?』簡単に聞けそうな質問が中々聞き出せずにいた。
「あ、どこ行くの?って思ってるでしょ」
「うん」
「安心して!行ったところある所だし、そんな遠くないから」
「…そうなんだ」
何か考えがあって、車を走らせているのはもう確信できた。問題はそれが何なのか、そしてどこで話すべき内容なのかだった。
車内には一緒に行ったアーティストのライブ音源が流れていた。これは出会ったばかりの時の。そう、三年前だった。裕斗の好きな男性アーティストのライブで、あの頃はその場の雰囲気に合わせてリズムをとるので精一杯だったけど、今ではコアな曲まで分かるようになった。
その三年のうちにお互いを知り、熱され、そして落ち着き分かったようになっていき、今ではお互いにかける言葉がなんとなく少なくなった。決して努力しなかったわけではない。
出会った頃、裕斗は転職活動中でフリーターみたいなものだったし、私は内定済みの就活生だった。時間が結構あったから、アホみたいに楽しい時間はあっという間に過ぎていった。一通り恋人らしいこともやったけど、急ぎ過ぎたこともあった。今振り返るともっと大事にしなければならなかった事に気づくし、つくづくないものねだりだなと思う。
でもこうやって休みの日には迎えに来てくれたりするし、私もあまり予定を入れずに極力二人で居るようにしている。お互い愛情が無いわけではない。
…だけど、それも義務のようにさせてるとしたら?明らかにドキドキしなくなったのも裕斗には多分バレている。
まあ、だから結局は努力不足なのだろう。
迎えに来る直前に飲んだ頭痛薬が切れてきた。
頭がガンガンしてくる。
きっと私は一緒に居るべきじゃない。
「ごめん、ちょっと寝ていい?」
裕斗のいいよ、を聞くか聞かないうちに
私は目をぎゅっと強く瞑って、
得体のしれない涙をごまかした。
つづく
3/26/2024, 1:40:19 PM