『ないものねだり』
私には昔から、何も出来ない。
勉強も、運動、他のことも、何もかも。
今まで努力して来た。学校の休み時間は勉強をし、放課後は勉強や運動、友達に遊びに誘われても断って勉強をし、スマホなどを与えられても触らずに自分磨きに費やして来た。客観的に見てもかなり努力したと思う。
でも、実らなかった。予習復習、問題集などをやっても点数はあまり上がらなかった。毎日ランニングを続けたのに、何も変わらなかった。
そのせいで親からも冷たい目で見られている。
どうしてなんだろう。何が駄目なんだろう? 努力が足りない? こんなにしてきたのに? こんなに頑張って来たのにまだ足りないと?
今日は前に受けた期末テストの結果が張り出される。私は441人中50位。
あんなに努力して来たのに50位? 私の上の49人は私以上に努力をしてきたと? この私に勝ると?
「やっぱり1位の煌驥君凄いよね〜」
「本当にね〜。今までずっと一位から落ちた事ないもんね。私達とは格が違うよね〜。いっつも他の男子達と遊んでたり夜も家に居ないで外で遊んでて勉強してないって噂だし。やっぱり才能かな〜?」
そんな会話をする女子達が視界に入る。
ふざけるな。才能? そんな物に私は負けたのか?
何も努力していないくせに。生まれつきに得た力で私の今までの積み重ねてきた努力が負けたのか?
「ねえ、なんかこっち見てない?」
「こわっ! なんであの子睨んで来てるの?」
「し、知らないよ。き、聞いてみる?」
ありえないありえないありえない。そんな事はあってはならない!
「あ、あの〜? なんか顔が怖いよ?」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ! 失せろ!」
「は、はい! ごめんなさい!」
「な、なにあいつ! きもいんだけど!」
そう言って女子達は去っていく。
欲しい。その才能という物が。私の努力を一瞬で上回るほどの力を持つそれが。
3/27/2024, 7:59:09 AM