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どうしてこの世界は……..
「こんなに物騒なんだァァぁぁぁぁ」
『うるっせぇぇぇぇぇ』
森の中の木々を掻き分けて走り抜ける女性がいた。彼女の後ろに目をやると、そこにはタワマンぐらいの大きさの白いクマがいた。クマは大きな腕を振り下ろし彼女を潰そうとしている。
「ぎょぁぁぁぁぁ」
彼女はそれを間一髪で避け、少し躓いてからまた走り出す。長らく走り続けており、そろそろ体力の限界が来ていた。
『お前、これくらいで息切れしてどうする?これだと魔女の端くれにもなれないぞ』
「別に…魔女に….なりたくて…..なったわけじゃ無いんだけどね!」
彼女は誰かに応える。しかし周りには誰もいない。殺意むき出しのクマを除いて。
「それに…あんたは…いいよね!どういう理屈か分かんないけど…私の頭ん中で….ちょこんとしているだけで….いいんだから!」
彼女は川を飛び越えながら話す。少し飛距離が足りなかったようで、コートの裾が少し濡れる。
『別にオレもお前の脳に意識を移したいと思ってここにいるんじゃ無い!師匠の決断だ!!』
「師匠師匠って…その師匠に裏切られたからこうなっているんでしょうが!」
『この大熊は関係ない!!まぐれだ!!それに師匠は考えあって…オレを….』
熊がそこら辺の木を引っこ抜いて彼女に投げる。矢のように突き抜ける木は見事、彼女が渡ろうとしていた吊り橋に突き刺さった。そして吊り橋は奈落の底へと落ちていく。
「ヤッバ、道なくなった!!」
『飛べ!!』
「無理!!」
彼女は後悔し始めていた。こんな事になるなら目立った事はせずにのほほんとした異世界転生生活を送るべきだったと。自分にチートスキルなんてものはないと。あるのは短剣と、魔女の見習い野郎だけ。こんなはずではなかった。異世界転生者こと桜田美優ことミユ。彼女は今、とてつもなくピンチな状況であった。




6/10/2025, 4:31:02 AM