蜂蜜林檎檸檬蜜柑

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【遠くの町へ】

今日は大好きなあの子へ贈り物を捧げる日。
少し遠く、小さな町へ足を運ぶ日。
今日はあの子が大好きなメロンパンとコーラを渡すんだ。
喜んでくれるかな。
あの子の大好きなメロンパンとコーラを黒いリュックサックの中に詰め、家を出る。鍵を閉めたらまずは近くのバス停へ。
ここから小さな町へはおおよそ2時間かかる。
行くのはちょっと大変だけど、あの子に会えるならそんなの気にしない。

バスに揺られて約2時間。バス一本とはいえさすがに疲れつつある。大好きなあの子に会う前に少し休憩をしよう。
こんな小さな町にもコンビニは存在する。僕はコンビニでツナマヨのおにぎりとお茶を買って、それをコンビニ内の小さなフードコートで食べた。朝、何も食べていなかったからか、おにぎりの具がすごく美味しく感じる。お茶も美味しい。

僕はコンビニを出た。腹は膨れ、大好きなあの子のいる場所まであともう少し。辺りはもう既に真っ暗で、人っ子一人居ない。小さな町なので調度良い街灯も勿論無い。僕は予め持っておいた携帯ランプの電源を入れ、歩き始めた。
細い道の端っこには用水路があって、落ちないか少し不安だ。もし、足を滑らせて落っこちたりでもしたら大変だ。大好きなあの子に会えるからって浮かれっぱなしでいるのは少し危険だ。僕は用水路に落ちないようにしっかりと歩いた

墳墓の前を通り、坂道を登り、木々の生い茂る山へと向かう。
大好きなあの子の所までもうちょっと。
森の中には少し小さな小屋がある。そこに大好きなあの子は居るのだ。
僕は小屋を見つけると期待に胸を膨らませながら腐りかけた木の扉をギィィ、と、開ける。ちょっと臭い。
あぁ、大好きなあの子が居た。山奥だからか、小屋の中は少し汚く、前よりも蝿が集っていた。だが大好きなあの子は前と全く同じ場所に座っている。
「久しぶり。1ヶ月ぶりだね。」
僕は感激の声を漏らす。だけど大好きなあの子は何も言わない。いや、何も言えないのだ。だけど僕は大好きなあの子の目の前にメロンパンとコーラを置き、少し話をしてからまた来るね。と一晩でその小屋を去った。

また来るね。その約束は叶わなかった。



一週間後、

朝から大雨で湿気が酷い日。

__次のニュースです。某月某日、某所の山奥の小屋で死体が発見されました。死体は既に白骨化していて、先程鑑定士が遺骨を鑑定した所、骨の形からしてこの骨は女性のもの。ということが判明しました。現在もこの事件については捜索中、との事です。__


テレビの電源をブツン。と切る。


「あーあ、あの子見つかっちゃったか。しかたない。また新しい子、探さないと。」


2/28/2023, 11:35:18 AM