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※BLです。苦手な方は飛ばしてください。









いつも思い出すのはあいつの笑った顔。太陽をいっぱい背負い込んで、大口を開けて笑う顔が、今も忘れられないまま胸の奥に居座っている。
「てめぇ、さっきからぐちぐちうぜぇんだよ!」
テーブルにくっついた耳にゴトリと鈍い音が響く。顔を上げることなく音を立てた方に視線を向けると、目が合った瞬間に結構デカめな舌打ちが返された。
「つめてぇなあ」
「あ?てめぇが飲むたびに毎度毎度同じことしか言わねえからだろうが!」
聞かされるこっちの身にもなりやがれ!とヤンキーよろしく睨んでくる。
「はいはいすみませんね」
でもしょうがねぇだろ。どうしたって忘れらんねーんだから。
「そんなになるくらいなら、いっそのことあいつに連絡すりゃいいだろうが!」
「それが出来てたらこんなことになってねぇよ」
俺だって連絡したい。声が聞きたい。またあの笑顔で笑いかけて欲しい。
でも、出来るわけねーじゃん。そんなカッコ悪いこと。
「そーかよ。ならそのままぐだぐたしてりゃあいい」
またひとつ俺に向かって舌打ちをして、新しくきたビールを美味そうに飲む。
「お前はいいよな。すぐに連絡できて」
「羨ましいか?」
ニヤリと意地悪そうに笑うと、俺に携帯画面を向けてくる。そこにはあいつから来たメッセージが映し出されていた。
「今日は地元の祭りに行ってるらしいぞ?」
ほら見てみろよ、とメッセージのあとに写真まで見せてくる。
「なんでお前には写真送ってくんだよ」
「俺が送れって言っといたから」
ふん、と鼻で笑って、これみよがしに携帯を揺らす。
「はぁ!?ふざけんな!俺には一切連絡ねぇのに!」
なんでお前にだけ。そんなに俺に連絡すんのが嫌なのかよ。
「じゃあ聞くけどよ、お前はあいつに一度でも連絡したことあんのか?」
その問いかけに、ぐうっと息を呑む。
「待ってたらあっちからくるなんて、クソ甘えこと考えてんじゃねぇだろうな?」
ますますなにも言い返せない。だって正しくその通りだ。俺が連絡しなかったら、あいつから連絡してくれると鷹を括っていた。
「後悔する前にやることやれや」
ピロン、とあいつが居なくなってからいままで一度も鳴らなかった俺の携帯が、軽やかにメッセージの着信を告げてくる。慌ててポケットから取り出して、確認すれば、待ち望んでいたあいつからのメッセージが映し出されていた。
『先輩は本当に素直じゃないっすね!』
そんな言葉と共に可愛らしい柴犬のスタンプが口を開けて笑っている。あいつによく似たスタンプは、俺があげたもの。目にしてすぐに、胸の奥からじわりと熱いものが込み上げてきた。
「な、なぁ!連絡、きた」
「だろうな」
何食わぬ顔でまたビールを飲みながら、あいつに宛てたメッセージを俺に見せてくる。そこにはテーブルにべったりと突っ伏す俺の写真と、『お前に会いたいって泣いててうぜぇからどうにかしろ』の一文があった。
「お前、これ、あいつに送ったの?」
嘘だろ。このだっせぇ写真を送ったのかよ。あいつには別に何日でもゆっくりしてきていいぞって、実家に帰る日に笑顔で伝えて快く送り出したのに。
こんなの、めちゃくちゃカッコ悪いじゃん。
「だから言ったろ?後悔する前にやれって」
さっきよりも楽しげに、それはもう悪い顔で笑う悪友の顔に、さっさと連絡しなかった自分を恨んですぐにメッセージを返す。
『お前がいないと無理。なるべく早く帰ってきて』

5/15/2023, 3:54:09 PM