「自分といても面白くない」「気の利いたことはできない」付き合い始めの頃、彼はそんなことを言っていた。もとより献身は先に好いた側がやるものだから、彼が気にすることではない。あなたはそのままでいい、なんて格好つけたことを考えていた。しかし、今となっては。声が聞きたいと電話をかけてきてすぐに照れて黙り込んだり、安かったから一緒にと買ってきた二人分のお菓子の値札が隠せていなくて普通に定価だったり、酔って膝枕を強行したかと思えば頭を延々と撫でながら労り始めたり。想像もしなかったことが次々起こる。好いた相手がどんどん変わって、そのどれもが愛しくて仕方ない。もうあなた以外誰も好きにならないから、どうかこのまま傍にいて。大願はまだ言葉にせず、今日も献身に勤しむ。
(題:理想のあなた)
5/21/2024, 8:34:18 AM