ゆう

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お盆を迎えた夏休み。

今日は義両親のお休みに、日帰りでドライブに出かけることになった。


両親は定年を過ぎ、私も県内とはいえ嫁いでからは、実家を離れ、夫と娘と三人暮らしをしている。

結婚してから四年、子供が生まれてからは二年。
正直、義両親とうまくやっていけてるとは言い難く、最近は子育てと仕事と、義両親との関わりで、精神的に疲弊してしまっている。

義両親には良くしてもらっているし、色々と援助もしてもらっている。

だけど、だからこそそれが私には苦しかった。

私の育った家庭は裕福とは程遠く、生活保護費で何とか命を繋いでいるような毎日を過ごしているような家庭環境だった。

両親の夫婦仲も良好とは言い難く、喧嘩は日常茶飯事だった。

父親は私が高校生の時に他界した。

原因の一端は、私にもあった。

それからのことは...あまり語りたくない。

そんな私に声をかけてくれたのは、私の数少ない友人だった。
毎日泣いてばかりいた私に、同居を持ちかけ、支えとなる恋人探しもしてくれた。

友人は既婚であり、子供もいた。
訳あってシングルマザーだ。

そんなある日、今の夫となる恋人との出会いがあり、時を待たずして同棲、結婚することになる。

地元を離れ赴くことに不安こそあったが、これで私も幸せになれる、と思ったものだ。

父の墓参りに来たのは、嫁いでから初めてのことになる。
久しぶりに墓参りにやってきた。

強い日差しが照りつけており、セミの鳴き声も鳴り響いている。

もうすぐ夕方、陽の影り始めた入道雲ができていた。

遠くでは蜩の鳴き声も聞こえている。

方向音痴で運転免許のない私は、誰かに連れてきてもらわないと、父親の墓参りすら来ることができない。

額から汗を流しながら、久しぶりに見た父の墓を綺麗に磨き、上から水をかけた。

「お父さん、ただいま」
私がそう言うと、義両親は少し間を置いて、
「私達もご挨拶させてもらっていいかい?」
と、私に声をかけてきた。

私が会釈すると、義両親は静かにお墓に手を合わせた後、私に向き直り、
「じゃあ、帰りましょうか」
と言って車に乗り込んだ。

帰り道の道中、夕立の降りしきる車内で義母から、
「今日は、ドライブ付き合ってくれて、ありがとうね。私達も、ずっとあなたのお父さんにご挨拶したいと思っていたんよ。あなたとも、もっとこうして時間を過ごしたいと思っていた。これからはあなたも私達の大事な家族なんだから、なんも遠慮なんかしなくていいからね」
と言葉をかけられ、私はただ、ずっと涙を流していた。


家に着く頃にはすっかり日が沈み辺りは真っ暗だったが、雨は止み、私の涙も止まっていた。

これからは義両親とも、今までよりうまくやっていけそうな気がしていた。


入道雲

6/29/2023, 2:54:52 PM