『子供のままで』
時刻は日付を回り、短針は1時を迎えようとしていた。
彼女に合わせた生活を送ること数年。
日付を跨いで帰宅することが少なくなっていたが、今日はすっかり遅くなってしまった。
ゴールデンウィークなど、大型連休明けは仕事が溜まってしまっていけない。
さっさと寝支度をすませて寝室に入り、ベッドへ直行した。
日中は汗ばむ陽気になってきたが、日が落ちると肌寒い。
薄手にはなったものの、まだ手放すことのできない毛布に彼女は包まっていた。
うわ。
今日もツタンカーメンみたいになってる……。
寝相にブームがあるのかは定かではないが、最近の彼女は、頭の先からつま先までぴっちりと毛布を覆って眠りについていた。
この姿を見るたびに、窒息しないか、寝苦しくないか気が気でない。
彼女にとって、大きすぎる毛布のサイズが原因なのかもしれなかった。
しかし、サイズを縮めてしまうと俺の足が出る。
困ったものだ。
彼女の無意識下の行動ですら愛おしいが、せめて顔はみせろ。
呼吸がしやすいようにと程のいい理由が目の前にあるため、俺は躊躇うことなく彼女の顔にかかっている毛布をめくった。
すよすよと小さな寝息を立てて、長い睫毛は隙間なく閉ざされている。
彼女の子ども時代を俺は知らずに、ここまできた。
それでも、これだけは言える。
このあどけない寝顔は、きっと子供のままで変わることはないのだろう、と。
顔に流れた青銀の髪の毛を耳にかけて、なんとなく整えてあげた。
ふわふわのマシュマロほっぺが無防備にさらされる。
「おやすみなさい、いい夢を」
我慢しようとも思ったが、誘惑には勝てそうにない。
俺は彼女の柔らかな頬に、そっと唇を乗せた。
5/13/2026, 6:17:00 AM